特技

わたしの数少ない特技のひとつに、有名人の発見ということがある。街中で誰も気がつかない有名人を見つけることが上手いのだ。

数人で歩いていて通りすがった人が有名人で、わたし以外は誰も気づいていなかったということがよくある。

つい一昨日もデパ地下で女優さんを見つけた。帽子を目深にかぶって眼鏡をかけ、いろいろ物色しながら歩いている風だった。わたしは帽子の下から見えた横顔を見てすぐピン!ときて、迷惑なことと思いながら顔が確認出来そうな一定の距離を保って後をつけた。もちろん周囲の人は誰もその人に気をとめてもいなかった。

いえ、普通は見かけてもそんな尾行みたいなことあんまりしないのですが、ちょっと一昨日は事情が違い・・・ もう1階下のフロアへエスカレーターで降りていくその人をわたしは更に追った。わたしもそのフロアに用があったしね。でもそうやって顔をしっかりと確認しようと後をつけたが、まったく顔をこちらへは向けてくれない。その人もわたしがついて来るのが分かってようで逃げたそうだったから潮時と思い、わたしは確認をあきらめ自分の行きたかった奥のコーナーへいってアスパラロールと味噌漬けを店員さんに頼んだ。そしたらそこへその女優さんがやってきたのだ!

すごくファンという訳ではないだが、こんなタイミングでその人に会えるなんて、きっと日本国民の40%くらいはわたしと同じ気持ちになったはずだ。これは千載一遇のチャンス!と思ったが、わたしはちょっと緊張しちゃったし、話しかけるのはあまりに迷惑、きっとわたしが言いたいと思うようなことを最近散々いわれてうんざりしてると思ったので自分の買物をつづけた。その人はわたしに恐怖かウザさを感じたのか自分の欲しいものを頼んでさっとそのコーナーを離れた。

しかし、わたしはそこで未練がましくなり、その場に居つづけてその人が品物を引き取りに戻ってくるのを待った。

そしてとうとうほかの買物を終えて帰って来たその人に近づき、「◎◎さんですか?◎◎さんの◎する◎にわたしは◎してしまいました!」といい、更に握手してくださいといって手を出し握手してもらったら「ありがとうございます」と丁寧にお礼をいってくれて隠れていた顔を見せてくれた。

うーむ、そ、それは!まさしく数日前までテレビで見ていたあの人とまったくおなじだ。何がって肌の質感が。

ちょっと濃いめの肌色で、マットな仕上がり、シミがひとつもみえない。あの「女優」の顔とおんなじだ!

そのあと少しだけ言葉を交わし、お邪魔してすみませんでした的なことをいってわたしは先にその場を離れた。でも帰り道、そして家に帰ってからも、もっと盛あがる話題があったのになーと悔しい気持ちになった。

自分の顔が最近シミだらけなので、同世代の女友達に会うと必ず彼女たちのシミやシワの様子を克明に観察してしまう。そして自分より多いと心の中で(うしし)と笑い、少ないとなにが違うんだと悔しい気持ちになる。人の不幸は密の味だ。

会った女優さんはわたしより3〜4才年下だと思うが、あの美しさ、お肌の綺麗さ。もちろん美容にかけているコストも時間も雲泥の差であることは明らかだが、そこからなにか得られるものはないかと考え、あの肌の質感は多分コンシーラーとかファンデーションの塗る量、塗り方などが大きく違うのではないかと勝手に分析した。

そこで今日のわたしは朝化粧をするとき、クリームファンデーションをいつもより多めに手のひらに取り、厚めにつけてみた。

なにか少しだけ近づいたようなそんな気がしたが、単に気のせいだろう。

街中で有名人のオーラを敏感に嗅ぎ分ける才能はあるのだが、メイクの才能はないのでした。

ちゃんりんしゃん♪