なんとなく起承転結 「迷子の子」

 

大門駅から大江戸線に乗る長いエスカレーターを降りようとしたとき、すぐ脇に小さな男の子が立っていた。

迷子かなと思ったが、急いでいたし、すぐお母さんが戻ってくるのだろうとそのまま立ち去ろうとしたが、その子の固まった表情を見たらなんだか気になり、立ち止まって話しかけてみた。

「ひとりなの?」「おかあさんは?」 聞いてみたが、2〜3才くらいのその子は、固い表情のままなにも答えない。誰かが探しにくる気配もなかったので、これはやっぱり迷子だ、困ったなと思い周囲を見まわしていると、深くて長いエスカレーターの先に、ベビーカーを持った女性が小さく見えた。あれがお母さんだ!と勝手に決め、男の子を下まで連れていくことにした。

表情をかえず、なにもいわないその子に、「下までいっしょに行こう」といって手を差し出すと、意外にも拒否せず、素直にわたしの手を握りかえしてきた。

腰をかがめ、あれこれ話しかけながら、長い長いエスカレーターを2人でくだった。男の子の手は小さくふにょふにょで、わたしの手の中で居心地悪そうにしていた。

最近身近にこどもがいないので、こんな小さな子と手をつなぐのは何年ぶりだろう。

下まで降りるとベビーカーの女性はやっぱりお母さんで、男の子は自分だけ階段で降りるといったのだが、ちょうど階段はクリーナーで掃除をしていて、その音が怖くて降りられなくなってしまったらしい。

よかったねと男の子の手を離したが、お母さんと会えてもその表情は固まったままだった。きっとひとり取り残されて、不安でいっぱいだっただろうな。知らない怪しいおばさんから解放されて、心のなかはほっとしていただろう。

こどもの手って本当にふにゃふにゃで、ぎゅっと握ったらつぶれちゃいそうだ。骨がまだ固まっていないのかな。まだ小さかった頃の甥っ子たちと、手をつないで歩いたことを懐かしく思い出した。