クニエダヤスエのキッチンアイディアブック

 

 大学を卒業するとき、わたしはやりたいことがなく、就職活動もしなかった。

唯一行動したことは、テーブルコーディネーターのパイオニア的存在だった憧れのクニエダヤスエの弟子になりたいと面接を受けにいったことだった。

編集者の二川昭子さんというかたが面接をしてくれ、その後なにか返事がくるのかと思ったらなにもなかったので、確か大学の校舎の入口付近にあった公衆電話から電話して、「いかがでしょうか?」と聞いたら「本当にやりたいならあなたからそういってくるものだ!」と怒られ、わたしシュンとしてしまい、それ以上なにも言えずにそれっきりだった。

なんであの時、お願いですからやらせてください!と言えなかったのだろうと、今でも時々思う。言っていたら、わたしが今歩いている道も違っていたかも知れない。

 

今言っているイベントで、となりのブーズにテーブルコーディネーターの本や雑誌がたくさん置いてあった。しかしなぜかクニエダさんの本が見当たらない。ブースの人に聞いてみたら、数年前に亡くなったことを教えてくれた。東北大震災の直後だった。

4年もそのことを知らなかったことに驚いた。

なんだか年月を感じたな。

ご縁がなかったというか、ご縁をつくることができなかったわたしだけど、20才前後の頃はクニエダさんの本にかなり影響され、食器を買ったり、ラタトゥイユレバーペースト、カレーライスをつくったり、ギンガムチェックのエプロンや巾着袋をつくった。

おしゃれな暮らし方を提案した最初の人だと思う。買う本はいつも新しい驚きや魅力に溢れていた。

仕事ではご縁がなかったけれど、クニエダさんの本から得たエッセンスは、今でもわたしのなかに残っている。

久しぶりに昔の本を読み返してみようかと思う。

素敵なセンスを伝えてくださり、ありがとうございました。

ご冥福をお祈りいたします。